ビスフォスフォネート系薬剤による顎骨壊死(Bisphosphonate-related osteonecrosis of the jaw; BRONJ)について|元町歯科診療所のコラム

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ビスフォスフォネート系薬剤による顎骨壊死(Bisphosphonate-related osteonecrosis of the jaw; BRONJ)について

ビスフォスフォネート系薬剤による顎骨壊死(Bisphosphonate-related osteonecrosis of the jaw; BRONJ)について

 歯科医院でよく骨粗鬆症のお薬を飲んでいませんかと質問されることが多いとおもいます.その理由として骨粗鬆症の治療に使用される一部の薬剤,特にビスフォスフォネート(以下,BPと略します)というお薬の副作用で顎の骨が腐ってしまう「顎骨壊死」という副作用が報告されているためです.今回,顎骨壊死について説明させていただきます.

 平成16年度国民生活基礎調査では骨折はお年寄りが寝たきりになる原因の第3位といわれていますので,骨折の予防は大変重要なことです.BPは閉経後骨粗鬆症の第一選択となるお薬で,骨密度を増加させる(4〜6%),椎体骨折(50%),大腿骨頚部(近位)骨折(30〜50%),末梢骨骨折リスクを低下させるなどの治療効果が報告されており,ほとんど副作用がなく,高い治療効果の期待できる薬剤であると理解されています.

 骨は常に骨芽細胞という骨をつくる細胞と破骨細胞という骨を吸収してこわす細胞がバランスよく働いており,常に古くなった骨が新しい骨におきかわる(リモデリング)ことで,力学的な負荷に耐えうるようになっています.このお薬は骨組織のヒドロキシアパタイトと結合し,破骨細胞の働きを抑制することで骨吸収を抑制する働きがあります.そのため,医科領域でも長期にわたってBPを服用されている患者さんでは過度の骨吸収抑制作用により,骨にダメージが蓄積し,むしろ骨が脆弱化する懸念があると言われています.そのため,5〜10年間服用した患者は1年程度の休薬期間を設けてはとの考えも最近提唱されています.

 歯科領域におけるBPによる顎骨壊死とは2003年にMarxら(Marx RE.  Pamidronate (Aredia) and Zoledronate (Zometa) induced avascular necrosis of the jaws: A growing epidemic. J Oral and Maxillofac Surg 61: 1115-1117, 2003.)が論文に報告したことを契機に広く認知されるようになりました.症状として初期には粘膜の腫脹や瘻孔形成,違和感などがありますが,骨露出や骨壊死を認めないものがあります.骨露出や骨壊死を認めても,自覚症状がないものもこれに含まれます.重症化すると,疼痛や排膿を伴う骨露出あるいは骨壊死が発現し,骨折などを引き起こすこともあります.近年ではビスフォスフォネート以外の薬剤での顎骨壊死も報告されるようになり,Bone Modifying Agent; BMA関連顎骨壊死やMedication-related osteonecrosis of the jaw; MIONJ(薬剤関連顎骨壊死)ともよばれるようになっています.

 BPによる顎骨壊死の発症頻度は経口剤で0.01〜0.04%,抜歯などの外科処置を行った場合,0.09〜0.34%と報告されています(歯科における薬の使い方 2015-2018 デンタルダイヤモンド社).逆にいえば99%大丈夫といってしまってもいいかもしれません.但し,骨粗鬆症の治療をうけている患者さんの数は1000万人にともいわれていますので,相当数の患者さんが存在していることになります.

現在BPは以下の商品が販売されています.

(骨粗鬆症に適応のあるBP経口剤)

  フォサマック

  ボナロン

  ダイドロネル

  ボノテオ

  リカルボン

  アクトネル

  ベネット

(骨粗鬆症に適応のあるBP注射剤)

  ボナロン

  ボンビバ

(悪性腫瘍に適応のあるBP注射剤)

  テイロック

  ゾメタ

  アレディア

 今回はここでは触れませんが,BP以外で顎骨壊死の副作用があるお薬として,デノスマブ(商品名:ランマーク,プラリア)というお薬もあります.

 現在,顎骨壊死に対する特異的な治療法はありません.抜歯や切開などの外科処置を契機に発症することが多いといわれていますが,自然発症するケースもあります.できるだけ,抜歯や切開などをしないですむように,投与開始前に歯科治療を終わらせておく,日常的な口腔清掃を心がけるなど予防が最善の方策と考えられています.抜歯や切開などの外科処置,口腔清掃不良,喫煙,飲酒,糖尿病,肥満,腎透析,がん,ステロイドやシクロフォスファミドなどの薬剤がリスクファクターとして報告されています.日頃から積極的な口腔ケアをおこなうことが重要になります.